教室を開くにあたって

1年間のイタリア語留学生活を終えて日本に帰国した私には、大いなる敗北感しか残っていませんでした。この敗北感の説明は私のブログを読んでいただくとして、私には確かめたい、または明らかにしたいことがありました。それはイタリア語文法に関して日本語で確認したいことがたくさんあったからです。もちろん私は留学に「現代イタリア語文法」という古い時代の本を持って行ったのですが、それはイタリアに置いてきてしまった。
なぜ私がイタリアに置いてきてしまったのか?といえば、読んでもよくわからなかったからです。つまり当時の私には役に立たない文法書だったのです。
私は留学生活でぶつかった疑問や不明箇所についての説明をわかりやすく書いてある本を求めていたのです。ですが、こういう都合の良い文法書・解説書はなかなか見つからなかった。市立図書館で探してもなくて大書店でも探したのですが、なかった。いろいろと探したけれどやはり、なかった。
そこで私は「イタリア語検定3級突破」なんとかという本を開いてみた。別に検定を受けるつもりがあったからではなかったが、自分の頭の中にあるイタリア語の不明箇所に関して詳細な文法解説を読みたかったのでした。
たとえば使役動詞(verbi causativi o fattitivi)といわれる動詞は;fare, lasciare, lasciarsiのような動詞のことで、ほかの動詞を不定詞の形で直に(前置詞を介さないで)連れて来る動詞であるということは当時でも理解していたが、その際の直接補語(complemento diretto)間接補語complemento indiretto)はどうなるの?とか、その使用例とかもたくさん知りたかった。
どういうことかというと、fareにつづく不定詞そのものの行為はfareの主語が直接的に行うものではなく、単に主語によって引き起こされる行為となるものです。すなわち、fareの主語が不定詞の行為を「させる」立場になるのです。・・・と言うような説明をしている文法解説本が私には必要でした。
で、この3級検定本が当時の私には満足行く内容ではなかったもののもっとも近かった。しかしながらこの検定本もあまり役に立ったとは言えなかった。なぜならわからない箇所の説明をじっくり読むと、新たな疑問が湧いてきてしまい、その説明はもちろん都合よく書いてあるわけがなかったからです。1年間の語学留学で一応文法は1から10まで習ったことは事実でしたが、留学最後のほうの私に最も必要だった先生は「イタリア文法を日本語で解説してくれる先生」だった。現地イタリアにはそんな先生がいるはずもなかったのです、考えてみれば当然のことなのですが。そのことをさきほどの使役動詞の解説で行なうと次のようになります。
1、Ti porto un caffè.(君にコーヒーを持ってくるよ)⇒Sono io che faccio l’azione.(行為をするのは私である、なぜならこの文の主語は私だから)
*私が君にコーヒーを持ってくる、がTi porto un caffè.の意味です。
ではfareを使うとどうなるでしょう。
2、Ti faccio portare un caffè.(君にコーヒーを持って来させる)⇒Un’altra persona, diversa da me, ti porta il caffè, ma dietro mia richiesta o sollecitazione.
(誰か別の人、私とは違う人、がそのコーヒーを君に持ってくる、でもその裏には私の要求または催促がある)
* 1は私が君のためにコーヒーを運ぶ。(私は運ぶ人、君は飲む人)なわけです。それに対して使役動詞fareを使った2は、(私は運ばせる人、君は飲む人)です。じゃあ誰がコーヒーを運ぶの?それは私でも君でもない誰か別の人なわけです。つまり2の文において直接的な行為(portare)をする人は書かれていないのです。←ここが重要!
それは私に頼まれた誰か別の人(たとえばカメリエーレとか私の他の友人とか、です)ところが、(私は君にコーヒーを持って来させる)の意味は、日本語だと君が運ぶ人のように聞こえるし、そうでないようにも聞こえます。
 2の文は、Faccio portare un caffè a te.と同じで、a teがfaccioの前に移動すると
Tiに変化しただけなのです。つまり、私は君へコーヒーを持って来させるのです。だから本当の行為をする人は文に書かれていない第3者ということになります。
使役動詞を使う文で表現される不定詞の主語は、決して文自体の主語として現れてきません;文の中では主語でなく直接補語(対格)として、あるいは与格補語としてまたは動作補語として機能する役割を負っています。
このように今の私は論理的に整然と書けるのですが、私がこのようになるまで最初の1年間の留学に加えてあと6年はかかってしまったのです。

私は自分がした回り道(特に文法に関する)をしてほしくなくてこの教室を始めました。現在イタリア語を勉強中のみなさん、あるいは留学して勉強したのだけれど中途半端になってしまっているみなさん、または留学はせずに独学でイタリア語を勉強中のみなさん、いろいろな立場でイタリア語を勉強されている方々、語学学校や教室で習うのはいいけれど受講料が半端じゃないからなあ、と考えている方々、一度私の教室へ見学に来ませんか? そのあとはみなさんで判断してください。

makimura